昨日の動画で墨・ヤニが入った珍しいアガベを紹介しました。
これは害虫によるものであるというご意見を多数いただきましたので、画像を用いてさらに詳細を見ていきたいと思います。
※この投稿はあくまでも「こういう変異がある」と示すものであり、害虫による被害が出ている株の購入を促すものではありません。
〇墨・ヤニとは
まず、大前提【墨・ヤニ】についてです。墨は富貴蘭では有名な変異で葉に油染みのような光沢部分が生まれます。古典園芸で珍重されてきた歴史がありますが、非常にマイナーな変異であるのは間違いなく、ほとんどの人が知らないです。

通常葉

葉裏の向かって右側が光沢があり、通常部分の白い点々もなくなっているのが分かります。
これが【墨】というものです。名前の由来は墨汁の光沢感を表しているのだと思いますが、正確には知りません。
この墨はイメージ的には火傷が治った際のケロイドと同じで組織が薄く弱いです。そのため傷みが出やすいです。

墨部分が爛れてカサブタが出来ています。また墨自体も黒くなっています。必ず黒くなるわけではありませんが、富貴蘭ではこの傾向が強いです。この爛れた状態を【ヤニ】と言います。注目する所は葉に対して縦方向の流れがあります。
また爛れは墨の範囲内に収まり、通常部分との境目が明瞭であることが分かります。
〇墨・ヤニ入りアガベ
では、今回のアガベの葉を見てみます。

墨光沢が新葉にあります。もし分かりづらい場合は拡大し白い点々の有無で墨のラインを見つけてみてください。
②については途中で途切れていますが、葉に対し縦に引き伸ばされたようになっています。縞斑が途中で途切れた場合と同じです。

古葉のヤニを撮影したものです。富貴蘭のヤニ同様カサブタ状の荒れがあります。しかし、上のヤニを見ていただくと墨の範囲内に収まっている事が分かります。

これはアザミウマやアガベマイトによる傷跡ではないかと思われるものです(検査していないので、あくまで予想です)。他の葉を見ても墨光沢がなく、まばらで、葉に対して方向性がないのが分かります。もちろん症状としては一例です。ネットで「アガベマイト 症状」などで調べると色々な例を見ることが出来ますが、どれも方向性がなく、墨光沢もない、グチャグチャのものが出てくると思います。
〇富貴蘭のヤニとの違い
ここで不思議なのが、なぜ富貴蘭のようにヤニが黒くならないのでしょうか。

富貴蘭の葉は傷やスレで黒く変色しやすい性質があります。

アガベの場合は黒く沈着が起きづらいです。

完全に細胞が死んでいる場合は黒くなる事もあります。しかし富貴蘭は黒くなっても細胞が死んでいるというより、色素の沈着や何らかの成分が酸化しているなどの反応に近く見えます(アントシアンを持たない青軸品種は、我が家の個体については黒くなっていないので、アントシアンかも知れません)。
これらの事からアガベのヤニは富貴蘭のように黒くなりづらいと考えられます。
※富貴蘭の方向けの話
富貴蘭の墨は本来は光沢に対して使われますが、葉に沈着したアントシアンに対しても墨という習慣が出来ています。なので、ツヤツヤしてないけど墨って言ってる?と思った方は、墨の対象の幅が実際は広く使われていると考えていただければと思います。
〇害虫による症状が出ているとのご指摘
動画のコメントには鋸歯が弱っているので害虫がいるというご意見もありました。

私は正直鋸歯については、栽培環境や苗の仕入れ状況によって変わると思っており、あまり気にしないので触れませんでした。
ただ害虫が発生した場合、株が弱勢化するため鋸歯も小さくなりますので、非常に鋭いご指摘だと思います。
新葉をよく見ていただきたいのですが、表面に白い点々が殆どありません。少しのっぺりした印象があります。実は墨が広範囲に入っている状況です。
墨には植物の呼吸器官である【気孔】が基本的にありません(富貴蘭の黒豹など気孔を持つ墨品種も一部存在します)。
そのため墨は多くなるほど弱勢化するのが一般的です。
そう考えると、この鋸歯が小さくなる現象は墨によるものである可能性が十分に考えられます。
なお、全面墨になれば生育がかなり厳しくなりますが、墨が多い個体をいかにしっかりと育てるかが栽培家の腕です。あくまで富貴蘭ですが絶妙な空中湿度や微量の肥料、冬の管理に気を使うなど色々工夫がされています。上手に育てる方は名人と言われます。
〇害虫と変異に対する考え方
今回、害虫痕とよく似た変異である事と墨・ヤニの変異の認知度の低さから、これを紹介するのは良くない、害虫の痕を変異と言っているとご指摘がありました。
これは私の動画内での説明が足りなかったことによります。大変申し訳ありません。
墨・ヤニの変異は起こりうる変異の一つであり、存在を共有したいのと共に、変異の有無と害虫の有無は切り離して考えていただければと思います。
変異があろうがなかろうが、害虫がいる可能性はどのアガベにもあります。
症状がなければ安心、変異っぽいから大丈夫だろうと考えるのではなく、どのような個体であれ適切な対策をしていただければと思います。
今回の個体も変異とは別件で害虫がいる可能性はありますので、引き続き薬剤による対処をしていく予定です。
以上ご参考になりましたら、幸いです。
ではでは☆彡
↑我が家で使っている育成ライトです♪



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