お客さん、ジュエルオーキッドって知っています?
一部で流行っているアレですよ、アレ。
アレじゃ分からない?
そんな簡単に情報が手に入るなんて思っちゃいけやせん。
世の中にゃ、知らない方が良い事ってモンがあるんです。
これは、お客さんの事を思っての助言なんでさぁ。
なんかヤバイモノなのかって?
ヤバイっちゃヤバイですねぇ。お客さん財布にいくら入ってます?
えっ?それっぽっち?
それじゃあ、ジュエルオーキッド事は忘れて下さい。それがお客さんのためでさぁ。
あのね、ジュエルオーキッドっちゅうのは蘭の仲間なんですよ。
そう、あの高価で崇高な植物界の女王・蘭の仲間。
コイツの存在を知っちまったが最後、とことん散財して、ジュエルオーキッド廃人になる人間を私は嫌と言うほど、目にしてきました。
お客さんにはそんなふうになって欲しくないんですよ。
悪いことは言わない。今日はお帰りくだせぇ。
そこまで聞いたら引き下がれないって?
本当に覚悟は出来てるんですか?
なら、仕方ありませんね・・・。
いや、見たらぶったまげますぜ旦那。へへへ・・・
と言うことでジュエルオーキッドがこちらです。
綺麗でしょう?
葉を楽しむ蘭でしてね。花は正直、野生蘭って感じの地味なものです。可愛らしいですけどね。
私も初めて見た時は、本当に驚きました。
宝石蘭との出会い
あれは今から6年くらい前の話です。
私はそれまで全く興味がなかった植物に少しずつ関心をいだいていました。
胡蝶蘭を育て始めたのがキッカケなんですがね、日に日に生長する胡蝶蘭を見ていると植物も動くんだなぁなんてね。
それまでは、植物なんてツマラナイ、動物の方が動きがあって楽しいという考えでしたから。
ちょうどその頃、メダカの飼育にハマっていましてね。
ピンク幹之を一から作ろうなんて思って、毎日水槽を眺める日々だったんです。
凝り性ですからねぇ。ハマると雑誌なんて買って、寝る前とか時には風呂に浸かりながら読むわけですよ。
ちょうどその時買った、メダカが特集された雑誌の一番手前のページに何故か植物が載っていたんです。
要は珍しい熱帯植物やカエルなんかを1ページ使って紹介するみたいなコーナーだったんだと思いますが、今となっては覚えていません。
でもね、そのページを見た時の印象は覚えていますよ。
「うそくせ~」
ってね。
その時紹介されていたのが、ジュエルオーキッドのマコデス・ペトラだったんです。
説明にはこうあります。
【光に当たるとキラキラと輝く金色の葉脈を持つ・・・】
「・・・やっぱり、うそくせ~」
いや良くあるでしょ?
生き物業界特有のグレーを銀って言ったり、イエローを金って言ったり・・・
どうせあの類いだろうって。
本当にメタリックが出るのは、昆虫を筆頭に爬虫類や両生類、魚ぐらいだろうってね。
植物に金?そんな成分で構成されている植物なんてあるわけがない。
でもね、見れば見るほど気になるんですよ。
ほら、胡蝶蘭の栽培をキッカケに蘭に興味を持っていましたし、実は幼少期から光り物が大好きだったんです。
よく母親に連れられてデパートに行くと、宝石店のショーウィンドウをジッと眺めている気味の悪い子供だったんですよ。
ジュエルオーキッド・・・、私が好きなものの名前が2つも入っている植物。
早速ネットで調べてみると、よく利用するネット通販サイトで販売されているではありませんか!
確かマコデス・ペトラだったなと言うことで、早速購入。
まぁ、キラキラしていなくても、見た目が面白いから良いかともう見る前から勝負を決めつけていましたよ。
到着
注文から2日後、商品が到着。
植物をネットで買うなんて初めてですから、ちょっとワクワクしながら封を開け、緩衝材を取り除いていきます。
出てきた植物を見て目を疑いましたね。
その植物は本当にキラキラとラメ状に輝く葉脈を持っていたんです。
自分の常識が完全に覆された瞬間でした。
それから私はジュエルオーキッドにすっかり魅了されました。
そして初ジュエル入手からしばらくして、赤平という町で蘭展をやっていることを知り、生まれて初めての蘭展にも赴きました。
そこには色んな蘭業者の出店が並んでいるのですが、赤平オーキッドという道内で有名な生産会社さんのブースでジュエルオーキッドが売られていたんです。
高い!でも、美しすぎる!こんなの見たことがない!
本物の彫金細工で出来たような美しい蘭が、ジュース用のプラカップに入って所狭しと並んでいます。
私にとっては宝の山。
その中で特に綺麗と思った品種を1つ購入しました。
とっておきの宝物が出来た瞬間です。
その後もペットショップのアクアコーナーなどで、ジュエルを買い集めました。
なかなか上手く育てることが出来ており、調子に乗ってどんどん集めました。それはもう廃人になってましたね。
暗雲
しかし、事件が起きます。
ジュエルの育て方って言うのは人それぞれ色々な方法がありますが、私の場合はそれなりに湿度を保つような栽培をしていたんです。
生水苔を使ってみたり、色々やっていたんですけどね。
何故か急激に腐り始めたんですよ。
おそらく、水苔や新しく導入した株に腐敗につながるような菌がついていたんでしょうね。
多肉と違い、多湿にするので菌にとっては都合の良い環境です。
消毒はしてみるのですが、上手くいったりいかなかったり、随分数を減らしてしまいました。
でも、その時の私はすでに廃人でしたから、また懲りずに買うわけです。
で、また時代は繰り返されるんです。コイツ腐ってやがるってね。
そんなことを繰り返して今に至ります。
最近は放っておいても育つ植物を中心に育てているので、ジュエルも強健種しか育てていません。
まぁ、欲しくなりますけどね。
きっと私と同じような経験をしたことがある方は沢山いるのではないかと思います。
上手に育てている人に聞いても、昔は数十万円分くらい枯らしましたねぇ、ハハ、ハァ・・・
なんて言ってましたから。
でも、その方今は上手に育てていますよ。
私は離脱してしまいましたけど、本当に素晴らしい蘭です。
今は国内生産者さんの努力で、かなり育てやすい丈夫な苗も出回っているようです。
私のように野生の苔に植え付けて菌に巻かれたり、ナメクジに食われたりと変な栽培をしなければ、大分育てやすいようです。
もし興味がある方、是非チャレンジしてみて下さい。本当に植物に対する常識が変わると思いますよ。
・・・な~んて言っちゃぁいるがねぇ。上手く育つから買っても安心、ちょっとお試しに買ってみようなんて甘っちょろい考えは捨てなせぇ。
この底なし沼みてぇな趣味、一度踏み入れたら深淵なんて見えやしねぇんだ。
迂闊に手を出しゃあ、人生持っていかれる。
そんな魔力を秘めた蘭、お客さんの手に負えますかねぇ。ケッケッケ・・・
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